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厚生労働省所管/労働者健康安全機構「メンタルヘルス登録相談機関」認定

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  • 21-12-15
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ストレスチェック制度、形骸化の落とし穴~事例から見るNGな取り組み~

2015年12月に、労働安全衛生法が改定されストレスチェック制度が義務化されました。ストレスチェック制度の主な目的は、「セルフケアの推進」と「職場環境の改善」です。

ストレスチェック制度とは…定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるとともに、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげることによって、労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止することを主な目的としたものです。

―厚生労働省ホームページより

厚生労働省が実施している「令和2年労働安全衛生調査(実態調査)」の結果によると従業員数50名以上の事業所での実施状況は91.5%であり、義務化によって一定の成果があったと言えるでしょう。しかし、実施する事業所が増える中で、ストレスチェック結果の活用に課題を感じる職場も多くあるようです。

今回は、組織の取り組みとしてよくありがちな落とし穴について事例を交えて紹介します。

 

「高ストレス者」への過度なアプローチは逆効果~よくある落とし穴①~

 

【事例①】
Aさんは、正直に質問表に回答した結果、「高ストレス者」となった。その後、職場から執拗に面談勧奨や医療医機関への受診案内があったため、嫌気がさして、次回以降のストレスチェックでは結果を操作(「高ストレス者」にならないように)して回答するようになった。

<解説>
「高ストレス者」=「すぐに医師による支援が必要な人」ではありません。様々な事情で一時的にストレス過多になったタイミングだったということもあるかもしれませんし、すでに通院して治療を受けている場合もあるでしょう。プライバシーを尊重して、過度に開示を求める行為は控えるほうがよいでしょう。

 

ストレスチェック制度では、組織の中に「高ストレス者」が何人いるのかが分かるために、「高ストレス者」をどうにかしなければとなりがちです。ただし、集計結果が分かるだけで、「誰が高ストレス者か」を知ることはできません。ストレスチェック制度では、個人結果の閲覧が可能なのは、人事権を持たない産業保健スタッフ等の専門職が望ましいとされており、事前に衛生委員会等で決定し、従業員へ通知の上で実施するとされています。尚、従業員からの結果開示の同意があれば、人事権を持っている立場のものでも閲覧できるようにすることができます。
ただし、組織側が個人の結果を必要以上に知ろうとすることは、従業員自らがストレス状態へ目を向けて、必要な対処を考えるきっかけを妨げる可能性があることを覚えておきましょう。

 

数字だけでは組織の状態を判断できない~よくある落とし穴②~

 

【事例②】
集団分析結果で、「上司の支援」の数値が低い部署があったので、定期異動を機に上司を交代させた。しかし、次のストレスチェックの結果で、「上司の支援」の数値は改善されず、更には職場全体の健康リスク値が悪化した。

<解説>
「上司の支援がない」=「上司の能力不足」とは限りません。実際に部下へヒアリングを行うと、上司への不満はなく、特に支援も求めていないということもよくあります。また、マネジメントスタイルが異なる上司が配置された場合、部下側として仕事のやりにくさが増すこともあり得るでしょう。

 

ストレスチェック制度は、職場のストレス状態や「高ストレス者」の存在が数値として知ることができます。しかし、数値はあくまでも数値です。数値の背景にある事情や組織メンバーの考えを汲み取った改善を行わなければ、状況を悪化させる結果になりかねません。厚生労働省のマニュアルでも集団分析の結果やその他の情報を総合して職場の状況を分析して、職場環境改善に取り組むようにとなっています。また、個人がストレスチェックを行ってから集団分析結果をもとに職場環境改善を検討する時期にはタイムラグがあることを念頭に置く必要があります。ストレスチェックはある一時点での個人のストレス状態や職場環境の状態を示すデータにすぎません。変化の中で状況を捉えて、適切な介入を行うことが、ストレスチェック制度を効果的に運用するコツです。そのためには、職場環境改善の適切なプロセスを理解し、取り組みにつなげることが重要です。

 

ストレスチェック制度の形骸化を防ぐために

上記のように組織としてはよかれと思って取り組んだことが逆効果になる事例を知らされると、「やはり、ストレスチェック制度は活用が難しい」と思われてしまうかもしれません。しかし、そうではありません。制度のポイントを押さえて、職場の状態に合った取り組みにつなげれば、ほかのサーベイなどと比べてコストや労力の面ではお得なツールと言えると思います。

今一度、自社のストレスチェック制度運営や結果の活用について見直し・検討をしてみてはいかがでしょうか。お気軽にお問合せください。