コラム
- 21-09-24
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「従業員向け相談窓口」を機能させるコツ~効果的な活用に向けて
従業員の心身の健康維持・向上の支援だけでなく、ハラスメント防止対策の一つとしても、「従業員向け相談窓口」を設置する企業は多くなっています。しかし、「相談窓口を設置したが、ほとんど相談がない」「相談はあるが、結局、問題は解決しない」など、効果的な活用に課題を抱える組織も多いように感じます。
今回、EAP(従業員支援プログラム)(※)を運営してきた弊社の実績から、「従業員向け相談窓口」を機能させるためのポイントをいくつかを紹介させていただきます。
設置する相談窓口に求める機能(役割)を明確にする
相談窓口が効果的に機能していない理由の一つには、相談窓口の設置の目的や期待したい成果が不明瞭であることがあげられます。相談窓口や相談対応には、様々な機能や役割がありますし、その機能に応じて、求められる専門性も必要な権限も変わります。すべての機能を1つの相談窓口で実現することは難しいと考えたほうがよいでしょう。
企業(組織)が設置する相談窓口では、企業(組織)側のニーズ(解決したいこと、果たすべき義務)と従業員側のニーズ(困りごと、解決したいこと)の両方を同時に扱うことになります。従業員側のニーズに応じているだけでは、組織としての課題解決や生産性の向上にはつながりません。
新しく相談窓口の設置を考えている場合はもちろん、現状の相談窓口を見直す場合も、まずは、各企業・組織の現状を踏まえて、「従業員向け相談窓口」にどういった働き(役割)を期待するか、どんな問題を優先的に対応できるといいかを整理してみてください。それによって、社内に相談窓口を設置すればいいのか、社外の専門機関へ委託をした方がよいのかということもより具体的に検討ができます。
相談窓口の周知は、具体的かつ多面的に展開する
相談窓口で実現したいことが明確になれば、そのことを従業員にどのように周知していくかを考えます。まず、周知する際に意識してほしいことは、具体的に伝えるということです。
【具体的に伝えたいこと】
・相談に対応するのは誰なのか
・どういった問題や内容が相談できるのか
・相談した後はどうなるのか
一般的に、相談する側は、自身が相談することについて少なからず慎重に吟味をします。自分が働く組織が設置した相談窓口へ相談する場合は、相談者側のそういった傾向はさらに高まると考えていいでしょう。相談者側の心理的な不安や抵抗を少しでも軽減できるようにするためには、事前の情報提供が重要です。
次に、周知の方法ですが、一つの方法に頼りすぎるとよくありません。社内での掲示、書面やメールでの個別への通知はもちろんですが、朝礼や研修など人が集まる機会に、担当者から直接、説明する機会を設けることも重要です。弊社では、EAP(従業員支援プログラム)を導入する際に、コンサルタントやカウンセラーが職場へ出向き、管理職向けに導入説明会を実施するようにしていますし、そこでの話がきっかけで相談につながることが多くあります。
最後に、周知する場合にはタイミングも重要です。特に困ってないときに、相談窓口の情報を知らされても、「自分には関係ない」と思いがちです。ストレスチェックや健康診断の結果にチラシを同封するなど、定期的に、且つ、継続的に周知していく取り組みが重要になります。
重層的な従業員支援の一つと位置付ける
組織と労働者の関係が変化する中、労働者が抱える課題は、多様化、複雑化してきています。この数年、我々のEAP(従業員支援プログラム)の対応では、医療や公的機関、様々な制度や民間サービスとのつなぎ役(コーディネーター)としての機能の重要性が増してきていると感じます。社内に相談窓口を設置した場合でも、その担当者や専門職だけで対応するのではなく、外部の資源も活用することは重要です。
また、人材育成や組織開発など、より包括的な視点から相談窓口の果たすべき役割を考えるとその効果や価値はより高まります。我々のEAP(従業員支援プログラム)としては、包括的な従業員支援の仕組みや体制づくりに寄与すべく、今後も情報発信をしていきたいと考えます。
※EAP(従業員支援プログラム)とは、「業績や生産性の維持・向上を目的として、社員やその家族が抱える様々な問題を解決・解消するための専門的サポートを行う施策・制度」の総称。