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厚生労働省所管/労働者健康安全機構「メンタルヘルス登録相談機関」認定

厚生労働省所管/労働者健康安全機構「メンタルヘルス登録相談機関」認定

コラム

  • 23-01-26
  • コラム

ハラスメント対策の基礎知識①~定義と基本的な相談対応~

2019年、労働施策総合推進法が改定されて、職場におけるパワーハラスメントについて防止措置を講じることが事業主に義務付けられました。また、事業主に相談したこと等を理由にした不利益取扱いも禁止されました。

 

ハラスメントの定義について

職場のハラスメントとは、どういったことを言うのでしょうか。厚生労働省のサイトによると下記のように定義されています。

職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。

厚生労働省ポータルサイト「あかるい職場応援団」より抜粋
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/definition/about

 

ハラスメントをどう判断するのか

職場でハラスメントが起きた場合、どのように対応するのか、今回はハラスメント相談窓口に寄せられた相談事例をもとに解説していきます。

相談を受けたら、まずは状況をヒアリングして、ハラスメントかどうかの判断を行います。

ケース)※複数の事例を参考にして、架空の職場を設定しています。

Aさんは、入社半年の新入社員です。3か月の研修の後に、営業部署に配属されました。

配属当時から営業成績が思わしくないこともあり、徐々に、気が滅入ることが増えていました。そんな時、上司Bより「やる気が感じられない」「そんな状態で営業へ行くのは無駄」と言われて、社内で雑用をするように命じられました。最初は、「自分がやれることをやろう」とまじめに取り組んでいたAさんですが、徐々に先輩や同僚の目線が気になるようになりました。自分は職場から疎外されていると感じて、会社が契約する社外の相談窓口に相談をしました。

 

さて、皆さんであれば、この状況をどう判断しますか。ハラスメントの定義に照らして、一つずつ検証をしてみましょう。

①優越的な関係を背景とした言動かどうか

上司から部下への対応であるということ、また、知識や経験が不足する新入社員への対応であることなどから、上司側が優位な立場にあることは明らかです。

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものかどうか

上司側にしてみたら営業成績が上がらない従業員に別の仕事を指示したという見方もできます。ただし、営業職と配属されたにもかかわらず、営業活動を禁止されるわけですから、その妥当性は慎重に考える必要がありそうです。

③労働者の就業環境が害されるものであるかどうか

Aさんと他の職場メンバーとの関係に悪い影響がでているように感じます。また、新入社員Aさんの能力開発の機会が奪われているとしたら、職場環境として健全な状態とは言えないかもしれません。

 

ハラスメントの可能性がある場合の対処

ハラスメントの定義と照らして検討したところ、ハラスメントの可能性があると考えられます。ただ、ここで会社側にハラスメントであると通知すれば、それで問題が終わるかというとそうではありません。

Aさん自身がどうしたいか、何を望むのかというのが、何よりも大切です。相談者の気持ちを無視しての対応は、意味をなさないどころか、逆に状況を悪化させるだけのことも多くあります。

また、このケースの場合、Aさん自身、当初、営業へ行かなくてよくなり、肩の荷が下りた感覚があったかもしれません。相談者が抱える気持ちの複雑さにも目を向けておくことは対応の方向性を考える上で重要です。

同時に、上司Bさんの考えにも十分に耳を傾ける必要がありそうです。もしかしたらAさんが営業に戸惑いを感じているように捉えて、一時的に営業以外の仕事を任せているのかもしれません。普段、Aさんと上司Bさんとの間でどのようなやりとりがあるのかを、詳しくヒアリングすることで、上司の考えへの理解が深まる場合もあります。

最終的にはAさん自身のメンタルヘルスの状態も踏まえて、Aさんが望む解決の方向を共有しながら、どういった対応が可能かを検討していくことになります。具体的な対応の検討を行うには、職場の担当者と連携が必要です。Aさんの同意を得ながら、職場の担当者との連携を図り、上司へのヒアリングなどを行うというのが一般的な対応です。

何よりも優先はAさんのメンタルヘルスの改善です。Aさんをさらに追い込むような対応は安全配慮義務違反となります。

また、上司Bさんが適切な指導や組織マネジメントが行えるように支援を行うことも重要です。そういった複合的な支援の展開がハラスメント防止対策には求められます。

 

あくまで架空の事例を基にした対応の一例です。相談窓口に寄せられる相談の中には、ハラスメントの定義と照らして判断に迷う=グレーゾーンのケースも多くあります。

弊社では、ハラスメント相談窓口の設置のほか、職場内でハラスメント防止対策の主軸となる担当者の養成や個別ケースへの対応支援など、様々なサービスを用意しています。まずは、お気軽にご相談ください。